元学校だった場所を改装して施設にしているところを知人に紹介され、ファンクラブの会報の撮影も兼ねてメンバー全員で行って来た。学校だった痕跡はたくさん残っており、廊下を歩くと懐かしい匂いがした。代谷が笑いながら「なんかええなぁ。高校の時はこの良さが分からず、さぼる事ばっかり考えていたのに」と言っていた。確かにそうだ。雨が降ったら休んだり、風が吹いたら遅刻して、南の島の大王の子供たちのように気ままな生活をしていたっけ。少し、施設の一部を借りてバンドで音も出して来た。高校生の時、僕らは休み時間を利用しては音楽室に籠って音を出していた。授業中でも楽器が触りたくて仕方がなかった。あれから10年以上経ったけど、一緒に休み時間に音を出していた高校の同級生であるメンバーと、あの頃のように学校の一室で音を出していたらヘンテコな気分になった。僕は最近、漠然と分かった事がある。若さは生まれた瞬間から失うものだ。当たり前と言えば当たり前だが、意外と気づいていない。少年は幼児に戻れない。青年は少年に戻れない。中年は青年に戻れない。老人は中年に戻れない。生まれた瞬間から僕らは若さと決別しているようだ。その代わりに知恵と経験を手にするのだ。若さは自然に消えるけど、知恵と経験はつかみ取らねばならない。だから、たくさんの傷を背負いながらも手を伸ばさなければならないのだ。ワックスをかけた廊下を歩きながら、僕は少年時代に別れを告げて、それでもあの頃の思いを忘れずにいこうと心に決めた。久しぶりに学校で音を出したら、新しい曲が何曲も出来た。それらは今の僕が書いたものではなく、今日までの僕だから書けたものなのだ。新しい歌たちがたくさん出来て来ています。楽しみにしていてください。