僕はわがままなやつだ。すぐに無いモノねだりをする。東京という街に住みだした当初は、日本の経済&情報の最先端にいる居心地の良さにどっぷり揺られていたくせに、数年経った今は「老後は田舎町でゆっくり暮らすのも悪くないな」なんて考えたりもする。誰も僕を知らない田舎町で暮らし、そこで誰かと出会い、恋に落ち、友が出来、週末にはちょいとピアノやギターを弾いて、近所の人に「歌がうまいね」なんて言われてさ。バカな話だ。田舎であろうが都会であろうが、恋をするときは簡単ではない。友といる事は簡単ではない。人と人と繋がっていく事は一筋縄ではいかない。その町にはその町のスピードがあり、結局はその流れの中で一生懸命悩んだりするものだ。そのスピードや悩みの規模は誰が測るものでも、平均的な基準なんてものもない。都会だから大変、田舎だからまだ楽なんてものはない。そこにいる人にしか分からないものであり、もっと言えば自分にしか分からないものだ。都会に住めば田舎に憧れ、田舎に住めば都会に憧れる。結局のところ、人はすぐにどんな環境にも慣れて、そして哀しいかなすぐに飽きてしまう。どれほどどれほど憧れて手に入れたものも、いつかは手の中になじみ、指の隙間から手に入れたものがこぼれ落ちている事も気づかずに、また新たなものを掴みにいくために手を広げ、過去のモノを手放し何かを手に入れる。繰り返しだ。その事を分かっていながらも、僕はいつだって現状維持を嫌い、両手を広げてまた掴みにいくのだ。刹那な行動である。が、生きる事とはそういう事なのかもしれないと、最近思う。