2011/07/12
全曲ライブ企画「nanana〜親父とオレとタバコとハナ歌〜」
7月16日、17日に行われる全曲ライブに向けて、覚えている限り、その曲を創った頃を思い出して書いていきたい。
数年前の夏、オレはむせ返るような熱さの中、エアコンをガンガンに効かせた車でレコーディングスタジオに向かっていた。
プリプロという、レコーディングの練習みたいな作業の為に。
カーステレオには、今回のレコーディングで録音するかどうか分からない、ただ「nanananana〜」とだけ歌った音が流れていた。
それにしてもいい天気だった。
いい天気の日は気分が晴れるのかと言えば、カミュの異邦人でもあるように、そうではない。
オレは突き抜けるような蒼空を見ながら、今日までの自分の人生、そして、今の自分の立っている場所を思いノスタルジックになっていた。
それにしても、この蒼空をどっかで見た事があるような気がしていた。
でもどこで見たのかが思い出せなかった。
この冬でオレは30歳になる。
望んだ場所に辿りつけていないオレはこの先どうなっていくのだろう。
後ろの車にクラクションを鳴らされ、急かされるようにアクセルを踏んだ。
まるで最近のオレの生き方のように。
ガキの頃のオレは自由だった。
優秀な兄とは違い出来の悪い弟は、過度な期待をされず、出来が悪いほど可愛いってなもので、愛情たっぷりに育ててもらい、オレ自身も出来の悪い弟を演じる事で家族みんなが円満にいく事を知っていたので、それを悪くは思っていなかった。
当時、我が家は決して裕福ではなかった。
人一人入るのがやっとで、お湯を沸かす時はベランダで操作するというお風呂を持つ県住に住み、母親はいつも「うちはお金がないから」を口癖にしていたし、兄貴にも「うちには絵本を買う金もないから我慢しろ!」と教え込まれていた。
それでも、休日になると、親父はいつもオレたち兄弟を車に乗せていろんなところに連れて行ってくれた。
手柄山遊園の山道、名古山霊園。
お金はなかったけど、オレはこういう自然で遊ぶのが大好きだった。
ただ備え付けの公園で汗をビショビショにかきながら、汗をかく事を誇らしげに遊んでいた。
さんざん汗をかいて親父の元に戻ると、親父は冷たいコーラを俺たちに買ってくれた。
そしてそのまま目線は遠くを見つめ、汗まみれのオレの頭をなでながら、「でっかい男になれよ!」と何かを託すように、自分の今日までの人生とは違う道を歩むようにという願いを込めてか、いつもその言葉をくれた。
そして決まって、大好きな煙草を吹かしながら遠くを見るのだ。
オレはその時の親父がたまらなく好きで、それと同じくらいたまらなく切なくなるのだった。
レコーディングスタジオに付いてすぐに電話がかかって来た。
オレは慌ててスタジオ休憩室のベランダに出て電話をとった。
電話の内容がなんだかったか覚えていない。
ただ、オレは電話を切った後もスタジオに戻る気分にはなれず、しばらくベランダでボーっとしていた。
「今から作るこのCDはどれだけの人に届くのだろうか?」新しいレーベルから出ると言う事もあり、期待と不安、いや長年の経験から不安の方が大きく、オレは思考を放り投げるように空を見た。
「あっ」
あの空だ。
行きの車でも思い出せなかったここ最近のどこかで見た蒼空。
それはオレがガキの頃、親父が眺めていた空の色と同じだったのだ。
あの頃の親父はきっと今のオレと同じくらい。
ずいぶん大人だと思っていたけれど、そっか、親父もまた先の見えぬ明日に、そしてそれでも進まなければいけない今の中、思考を放るように空を眺めていたんだなぁと思った。
プリプロレコーディングがはじまった。
予定曲をとり終えた後、ワガママを言って、もう一曲頭にある歌を歌わさせてほしいとメンバーにも無理を言って、コード譜だけを渡して録り出した。
気が付くとオレは、あの部分。
そう、シャウトしながら「そして30歳になったオレはと言えば 託された夢とは違う生き方を選んでいる 戻れない昨日にばかりしがみついてる日々さ」と歌っていた。
nananaのはじまりだった。
そして、あれから数年経ったオレはと言えば、変わらずに抜けるような蒼空の下、その突き抜けた先を見に行こうと誇らしげに汗をかいている。
追記、2010年、親父が初めてオレのライブを見に来てくれた。
渋谷O-EASTワンマンライブ。
オレはアンコールで、でっかい男のオレなりの答えを伝えるようにこの歌を歌った。
追記2
この歌をイベントライブの時、リハーサルで演奏すると楽屋にいるバンドマンまで見に来ると言う現象が起こる。
嬉しい事だ。
たしかにあの歌唱方法と演奏は誰にも真似が出来ないオリジナルであり、オレが造り出した手法だと思う。
星の数ほどある音楽の演奏方法の中で、オレたちが考え出したものがあるってことをオレは嬉しくも誇りにも思う。
追記3
この歌の歌詞にはオレの大好きなフレーズが溢れている。
「無敵の10代」
「出会いと別れを繰り返す 螺旋のような日々で 今日もあくびをしながら ぼんやりと明日を待ってる あんなに愛した人さえも もう今は思い出せない」
「そしてオレはあの日の親父と同じ場所に立ち 吸えもしないタバコを吸ってずっと遠くを見てた」
全曲ワンマンまで後4日!
数年前の夏、オレはむせ返るような熱さの中、エアコンをガンガンに効かせた車でレコーディングスタジオに向かっていた。
プリプロという、レコーディングの練習みたいな作業の為に。
カーステレオには、今回のレコーディングで録音するかどうか分からない、ただ「nanananana〜」とだけ歌った音が流れていた。
それにしてもいい天気だった。
いい天気の日は気分が晴れるのかと言えば、カミュの異邦人でもあるように、そうではない。
オレは突き抜けるような蒼空を見ながら、今日までの自分の人生、そして、今の自分の立っている場所を思いノスタルジックになっていた。
それにしても、この蒼空をどっかで見た事があるような気がしていた。
でもどこで見たのかが思い出せなかった。
この冬でオレは30歳になる。
望んだ場所に辿りつけていないオレはこの先どうなっていくのだろう。
後ろの車にクラクションを鳴らされ、急かされるようにアクセルを踏んだ。
まるで最近のオレの生き方のように。
ガキの頃のオレは自由だった。
優秀な兄とは違い出来の悪い弟は、過度な期待をされず、出来が悪いほど可愛いってなもので、愛情たっぷりに育ててもらい、オレ自身も出来の悪い弟を演じる事で家族みんなが円満にいく事を知っていたので、それを悪くは思っていなかった。
当時、我が家は決して裕福ではなかった。
人一人入るのがやっとで、お湯を沸かす時はベランダで操作するというお風呂を持つ県住に住み、母親はいつも「うちはお金がないから」を口癖にしていたし、兄貴にも「うちには絵本を買う金もないから我慢しろ!」と教え込まれていた。
それでも、休日になると、親父はいつもオレたち兄弟を車に乗せていろんなところに連れて行ってくれた。
手柄山遊園の山道、名古山霊園。
お金はなかったけど、オレはこういう自然で遊ぶのが大好きだった。
ただ備え付けの公園で汗をビショビショにかきながら、汗をかく事を誇らしげに遊んでいた。
さんざん汗をかいて親父の元に戻ると、親父は冷たいコーラを俺たちに買ってくれた。
そしてそのまま目線は遠くを見つめ、汗まみれのオレの頭をなでながら、「でっかい男になれよ!」と何かを託すように、自分の今日までの人生とは違う道を歩むようにという願いを込めてか、いつもその言葉をくれた。
そして決まって、大好きな煙草を吹かしながら遠くを見るのだ。
オレはその時の親父がたまらなく好きで、それと同じくらいたまらなく切なくなるのだった。
レコーディングスタジオに付いてすぐに電話がかかって来た。
オレは慌ててスタジオ休憩室のベランダに出て電話をとった。
電話の内容がなんだかったか覚えていない。
ただ、オレは電話を切った後もスタジオに戻る気分にはなれず、しばらくベランダでボーっとしていた。
「今から作るこのCDはどれだけの人に届くのだろうか?」新しいレーベルから出ると言う事もあり、期待と不安、いや長年の経験から不安の方が大きく、オレは思考を放り投げるように空を見た。
「あっ」
あの空だ。
行きの車でも思い出せなかったここ最近のどこかで見た蒼空。
それはオレがガキの頃、親父が眺めていた空の色と同じだったのだ。
あの頃の親父はきっと今のオレと同じくらい。
ずいぶん大人だと思っていたけれど、そっか、親父もまた先の見えぬ明日に、そしてそれでも進まなければいけない今の中、思考を放るように空を眺めていたんだなぁと思った。
プリプロレコーディングがはじまった。
予定曲をとり終えた後、ワガママを言って、もう一曲頭にある歌を歌わさせてほしいとメンバーにも無理を言って、コード譜だけを渡して録り出した。
気が付くとオレは、あの部分。
そう、シャウトしながら「そして30歳になったオレはと言えば 託された夢とは違う生き方を選んでいる 戻れない昨日にばかりしがみついてる日々さ」と歌っていた。
nananaのはじまりだった。
そして、あれから数年経ったオレはと言えば、変わらずに抜けるような蒼空の下、その突き抜けた先を見に行こうと誇らしげに汗をかいている。
追記、2010年、親父が初めてオレのライブを見に来てくれた。
渋谷O-EASTワンマンライブ。
オレはアンコールで、でっかい男のオレなりの答えを伝えるようにこの歌を歌った。
追記2
この歌をイベントライブの時、リハーサルで演奏すると楽屋にいるバンドマンまで見に来ると言う現象が起こる。
嬉しい事だ。
たしかにあの歌唱方法と演奏は誰にも真似が出来ないオリジナルであり、オレが造り出した手法だと思う。
星の数ほどある音楽の演奏方法の中で、オレたちが考え出したものがあるってことをオレは嬉しくも誇りにも思う。
追記3
この歌の歌詞にはオレの大好きなフレーズが溢れている。
「無敵の10代」
「出会いと別れを繰り返す 螺旋のような日々で 今日もあくびをしながら ぼんやりと明日を待ってる あんなに愛した人さえも もう今は思い出せない」
「そしてオレはあの日の親父と同じ場所に立ち 吸えもしないタバコを吸ってずっと遠くを見てた」
全曲ワンマンまで後4日!
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