僕が生まれて初めて間近で見た芸能人は沢口靖子さんだった。
姫路城のお姫様の役を演じられたとの事で、それもあって我が街姫路へ。

中学生だった（と思う）僕は友達ヨウゾウと嬉しそうに姫路城まで出向き、「どれどれ芸能人とはいかほどのものか。。。」と人波をかき分けてみると。

そこには今まで見てきたどんな美しいものよりも美しい人がいた。
僕も、確認していないがおそらくヨウゾウも固まっていた。
初めて見る芸能人はすさまじく美しかった。
たぶん初めて宇宙人を見てもあんな感じになると思う。


放心状態のまま、魂を抜かれたまま僕とヨウゾウは立ち尽くし、あっという間に沢口靖子さんは見えない方向に。

しばらくしてヨウゾウが「沢口靖子、俺の方見て笑ったよな」とぼそっと言った。
僕はすかさず「あほか、俺の方見て笑ったんや」と返すと、こっからは『俺の方見て笑った問答』。
なんの生産性もない。
喧嘩するくらい言い合ったが、もちろん沢口靖子さんは「僕らの方向」を見て微笑んでくれただけで、僕もヨウゾウも電柱も奥の出店もみーんなまとめで微笑んでくれたのである。
まさに菩薩。


あれから数年、東京に来て、この仕事をして、やはり一般の人より芸能人を見る機会は多いと思うが、出会う度にいつも思う。
「あぁ、この人たちは別格だ」と。
クラスで一番可愛い、この辺りで一番美人、そんなもんじゃない。
圧倒的である。
リハーサルスタジオでたまにすれ違う、中学生くらいの女の子でもモデル志願の女の子は別格である。


すげぇなぁと思うと同時に、「クラスで一番可愛い」「この辺りで一番美人」と言われてきた人が、女優を目指すも上には上がいる事を知り、夢半ば挫折してきた人を思い出し、切なくもなる。


才能と言うものは持って生まれたもの。
才能の上に努力された日には叶わない。
でも、気休めでもなんでもなく才能は一人ひとつはあるもの。
まだ見つけてない人は、まだ見つけていないだけ。
もしくは普段の生活に「遊びのフリ幅」や色んな事にチャレンジする行動力が少し足りないだけ。
どこに才能があるかも分からない。
そして才能は人前に出るものだけでは決してない。
愛する人の為だけに発揮する才能もある。

僕は自分の才能に気付き、確信出来ただけでも生きてきて良かったなぁと思う。
が、僕が確信したほど周りに気付かれていないので、もっと努力しようと思う。